目・声・歯・お腹…その異変が危ない、ひと目でわかる「がんの合図」

体内には、かゆみを引き起こす物質と、かゆみを抑える物質があり、健康なときは、両者の均衡が保たれている。だが肝臓にがんができると、肝臓の働きが妨げられ、このバランスが崩れてかゆみが生じる。

 しかも、肝臓由来のかゆみは、皮膚の上に発疹ができる通常の皮膚疾患と異なり、体内物質によって脳を直接刺激する。そのため、かゆみは全身にわたり、掻いても治まらず、抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めも効かない。

 ステージⅢの肝臓がんの5年生存率を考えると、厳しい数字であることにはちがいないが、それでも身体のかゆみという「合図」に気付いたため、吉田さんは一命を取り留めた。

 「まさか、かゆみからがんが見つかるとは思いもよりませんでした。あのとき皮膚科に行くだけにして、総合病院で検査をしていなかったら、がんはもっと進行していたはず。今ごろ死んでいたかもしれません」(吉田さん)

 すべてのがんは何らかの合図を発する。ページ末のイラストでは、身体の部位別に、見落としてはならない「がんの合図」をひと目でわかるように図解した。

 一見すると直接がんとは関係なさそうな合図があることがわかるだろう。たとえば、夕方になると体がだるくなり、まぶたが自然と下がってくるなら脳腫瘍=脳のがんかもしれない。

 最近、歯がぐらつき、歯茎から出血する。それが歯周病ではなく、原因がわからないまま症状が続くなら、口腔がんが疑われる。(口腔内カメラ)

 爪が発する合図でがんが明らかになることもある。爪の付け根が盛り上がり、指先全体が一回り大きくなっている。そんな指先の異変も肺がんの兆候となり得る。

 詳しいメカニズムは解明されていないが、肺がんにより、指先に血が溜まると、血管の成長を刺激するタンパク質の量が増加する。それによって、指先が太鼓のばちの先のように腫れると考えられている。

 遺伝による場合もあるが、同じ肺疾患でも、肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患では発症しない。初期症状が少ない肺がんでは数少ない手掛かりだ。(歯科用ポータブル診療ユニット)