口腔機能の低下予防…健康悪化

80歳で自分の歯が20本以上ある状態を目指そう――。そんな数値目標を掲げた「 8020はちまるにいまる 運動」が始まった平成元年(1989年)から30年。達成率は1割未満から5割に増えた。人生100年時代を迎え、今度は 口腔こうくう 機能の低下(オーラルフレイル)予防が新たな目標に加わった。

 

8020運動は、一生自分の歯で食べることを目標に、厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱した。達成率は当初7%程度(平均残存歯数4~5本)だったが、2016年調査では51・2%と半数を超えた。

 

増加の背景には、毎日の歯磨き習慣の浸透や、口の健康意識の高まりに加え、フッ素入り歯磨き粉やキシリトール入りガムなどの登場で、虫歯や歯周病が減ったことが考えられる。歯の本数をクリアした次の段階の課題として、注目され始めたのが口の衰えだ。

「リスク2倍以上」


年をとり、かむ、のみ込む、舌を動かすといった口の働きが衰えると、健康な人に比べて4年後の要介護や死亡リスクが2倍以上に高まる――。東京大学高齢社会総合研究機構は、65歳以上の千葉県柏市民約2000人を対象にした研究で、口の衰えが寿命を左右することを示す論文を18年に発表した。

 

口の衰えが進むと、食事量、特に肉類が減少する傾向がある。栄養の偏りが健康状態の悪化や体力の低下につながったと推測される。研究をまとめた飯島勝矢教授は「口の衰えは、食事だけでなく、会話を減らし、社会的な孤立につながる可能性がある」と指摘する。(ウォーターピック

 

日本老年歯科医学会も口の衰えの問題を重視し、16年11月に「口腔機能低下症」の疾患概念と診断基準を公表。口の衛生状態不良、口の乾燥、かむ力の低下、舌や口、唇の運動機能低下、舌の押す力(舌圧)の低下、 咀嚼そしゃく 機能の低下、 嚥下えんげ 機能の低下といった7項目のうち、3項目以上が当てはまると診断される。(超音波スケーラー用チップ)